暇人の日記保管庫

文字通りのアレです

ある男の追想

彼は街への道を歩いている
彼はさる貴族の下で領地の森の番をしていた
今日はある頼まれごとを片付けにいく
彼は一人の少年をおぶってとぼとぼと歩いていた

ニュールンベルク
過疎化がすすむ街で人気もない(調度、晴れて皆郊外に出払っているのもある)に突然少年が現れた
少年はあちこち連れられて(そんなに広い街でもないのに何時間もかけて)結局警察につれて行かされた
少年は目撃者から『御者の助手』『仕立屋の徒弟』『百姓の小僧』『浮浪者』と好き勝手に見られた
少年は警察で自分の名前を名乗った
『カスパール・ハウザー』と

彼は貴族からリストラを受けて娘の家と元の職場をいったり来たりしている
彼は結局、あの少年との旅を人に言うことはなく胸の中にしまった
フランツ・リヒターは75歳で亡くなった

謎のカスパール・ハウザー (河出文庫)

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